ひろのぶの備忘録

主旨: 災害時になるべく数多くのWiFiスポットを緊急時開放し帰宅難民に通信手段を提供する提案。

帰宅難民

地震発生から帰宅開始まで

2011月3月12日14時46分に発生した 東北地方太平洋沖地震 の影響により、 首都圏において公共交通網が長時間麻痺し、 大量の 帰宅難民 が発生した。 筆者も千駄ヶ谷から杉並区の自宅に帰るべくその中の1人になった。 地震後、時をおかずして携帯電話網に対し通信規制が行われ、携帯電話を利用して通話および通信が不可能となった。 携帯電話を利用した家族との連絡は諦め、 デスクトップコンピュータから被災圏外の友人や関係者に状況を説明した電子メールを送り、 帰宅に必要な準備をした後、仕事場を離れた。時間は午後5時過ぎであった。

帰宅中

首都圏のJRはすべて停止しており、 途中の明治通りは渋滞で自動車がまったく前に進まない状況であった。 代々木駅から新宿方面に向かう歩行者は通常では見たことのなほどの数に膨れ上がり、 さらに新宿に近づくにつれ人が増えていた。 新宿から青梅街道に抜け、環状7号線までの歩道は通勤時の駅構内並に人があふれていた。 その間、携帯電話は規制され通話も通信も不可能だった。

途中、ファーストフードチェーン店をみつけ、 契約しているWiFiサービスが利用可能かスマートフォンで確認した後、店内に入った。

WiFiによる通信

まず背負っていたリックの中からノートPCを立ち上げWiFiに接続しメールをチェックした。 次にSkypeを立ち上げ、以前から定期的にビデオ会議をしていた共同研究グループに対してメッセージを送付した。 Skypeのメッセージは、ログインしていない場合でも、次にログインした時に、そのメッセージを通知する。

SkypeはP2Pなのでノード同士で通信する場合、 twitterのように特定の処理サーバを経由しないので、 特定のサイトやサーバに集中し処理能力を越えてしまうようなボトルネックは作らない。 またメッセージ(チャット)で送るデータサイズは1メッセージあたり高々80から160文字分という極めて小さいサイズなので、 ネットワークを逼迫するような大量のトラフィックになる懸念は現在の日本のネットワーク能力から見て非常に小さい。

この時は、筆者、奈良先端大学、金沢大学にいる3名がリアルタイムでメッセージを相互に交換しチャットした。 メッセージではまったく問題なかったので、 次に音声のみのSkypeを試みた。音声品質に問題なく通信が出来た。 トラフィックモニタで目視するとおおよそ64kbps前後であった。 北海道(実家)にSkypeアウト(固定電話へのダイアル通話)を行うが、 これもまったく問題はなかった。 Skypeアウトで都内にいるはずの家族の携帯電話に通話を試みるが通話規制のメッセージが聞こえるだけで通話は不可能であった。

考察

今回の経験から

今回の帰宅難民の経験中、帰宅することで手一杯だったため詳細なデータはとってはいない。 しかしながら今回の経験が得られたといえる。

  • 携帯電話経由での通話とデータ通信は役に立たなかった。
  • スマートフォンはWiFi機能があるので、この接続があればメールやメッセージ交換はできる。
  • ファーストフード店などのWiFiホットスポットがそれなりにあった。
  • 災害時に携帯電話経由でのデータ通信を確保するため携帯中継局アンテナを増やすというアプローチは、 通常に使わない施設に過剰に投資するということになり難しいと思われる。 スマートフォンであればWiFi経由で通信ができるので、 既にあるインフラを災害に活用するのが近道と考える。

    提案

    以上を踏まえて提案を行う。

  • 災害時にはWiFiホットスポットを緊急時開放する。
  • 商用ホットスポットだけはなく、それ以外の無線LANも緊急時開放する。
  • 緊急時開放を提供しているWiFiスポットを利用者に知らせる。
  • これらを実施することによって今までよりも多くのスマートフォンユーザに通信を提供することが可能である。 ただし以上を実現するために「運用」「技術」「法律」の3つ部分でクリアにする課題がある。

    運用

    現状のWiFiサービスでは、 これでは帰宅難民のスマートフォンを収容するのは難しい。 そこで非常時には現在のWiFiサービスだけではなく、コンビニ、ファミリーレストランなど通常は業務で使う無線LAN (必要な技術的要件に関しては後述する) を緊急時開放する。 また商用施設だけはなく、 交番、図書館、自治体の出張所など公共施設などでも緊急時開放する。 緊急時開放を提供しているWiFiスポットには「緊急時開放WiFiスポットマーク」シールなどを張ってわかるようにする。

    技術

    緊急時開放する場合、本来使うべき通信の帯域は確保し、 かつセキュリティの関係上、通信を一般開放するセグメントを確保する仕組みを持つ必要がある。 加えて、接続数が多くなることを前提とした帯域制御の仕組み入れる必要がある。 また緊急時開放は滅多に行わないので、 簡便な操作で行う仕組みで緊急時開放を稼働させる、 あるいは外部から自動的に緊急時開放できるような仕組みを組み込む。

    非常時アクセスポイント要件

  • マニュアルによるスイッチ操作およびネットワーク経由での命令によりパブリックアクセスモードを稼働させることができる。
  • パブリックアクセスモードのSSIDは"非常時アクセスポイント"、"Emergency Access Point"と表示される。
  • パブリックアクセスモードからの外部への通信速度は1セッションあたり128kbpsに制限する。
  • 接続セッション数が指定した上限になるとSSIDを非表示にし、新しい接続を拒否しする。
  • パブリックアクセスモード側WiFiネットワークはプライベートアドレスとする。
  • 1セッションあたり最小20分のセッション時間を提供するものとし、セッション時間を使い切ると切断しても良い。
  • 尚、同時接続数などはパブリックアクセスモードを提供するWiFiルータ機材の性能や通常利用側のQoSに依存する。 通常利用側が十分なリソースを提供できない場合、リソースを提供できなくなった時点で、SSIDを非表示とし接続を拒否する。 接続セッション数は運用側で任意の数に設定することが出来る。

    法律・規約等

    プロバイダ責任制限法などでISPおよび契約者は発信者に対する管理責任を負わされている。 これはISPはユーザを特定することが出来るということを前提としている。 緊急時開放時は、不特定ユーザが利用することになるが、ISP側は、これを許容するという形しなければならない。 その際に、プロバイダ責任制限法がどのように解釈されるのか議論が必要である。

    以上の「運用」「技術」「法律・規約」の面から詳細を詰め、 非常時におけるWiFi開放を実現する可能性探り実現できることを希望する。

    すずきひろのぶ
    Email: suzuki.hironobu at gmail dot com
    1st Ver: openwifi.html 1.1 2011/04/20 04:43:32
    Latest Ver: $Id: openwifi.html,v 1.6 2012/03/16 14:04:40 hironobu Exp hironobu $

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